取締役を1名又は2名にすることもできますし、監査役を置かないこともできます。そのときは、定款中の機関に関する規定を株主総会で変更するとともに登記の記録に関する変更も必要です。
たとえば、取締役を1名又は2名にしたときは、取締役会を設置しない会社になります。
法務局では、平成18年5月1日付けで、「取締役会設置会社に関する事項」及び「監査役設置会社に関する事項」の欄が追加され、それぞれ「取締役会設置会社」、「監査役設置会社」の登記が職権でなされています。これに該当しなくなったときは、各々3万円の登録免許税を支払って抹消する必要があります。
会社法では、取締役の任期は原則として2年となります。ただし、株式の譲渡制限に関する定めを設けている株式会社については、定款で定めることにより最長10年まで伸ばすことができます。
また、監査役の任期は原則として4年となります。こちらも、株式の譲渡制限に関する定めを設けている株式会社については、定款で定めることにより最長10年まで伸ばすことができます。任期を長くすると、役員変更の手続き費用の軽減につながるというメリットがある⼀方で、任期満了の年を忘れてしまったり、任期途中で解任した取締役からの残りの期間の役員報酬の請求問題の発生といったデメリットが指摘されていることも考慮する必要があります。
作成された定款が、商法の施行下で作成されたものである場合、会社法との対応を整備するとしたら、多くの条文につき、変更決議を余儀なくされます。しかしながら、一般的な考え方としては、特別な変更をしなくても現行法に対応したものとして、読み替えされるので、そのままでもよいとも言われています。一方、定款提出先との関係で、登記されている表現(とりわけ職権で変更された箇所)と定款の表現との一致を求められる場合もあります。各社の状況との関係で具体的に判断することになります。
役員の方にとって、定款の不都合を具体的に検討されるときも、役員の方がどのような立場にあり、どのような利益を想定されているかによって回答が異なります。また定款が各社で異なるため一概には言えません。
ここでは、仮に、役員の解任のケースをご紹介しておきましょう。
これまで、取締役を解任するには、株主総会の特別決議が必要でした。そこで、取締役が発行済株式の議決権の3分の1を上回る議決権を保有することで、解任決議を阻止してきたような場合がありました。ところが、現行法では、普通決議で取締役を解任することができるようになりました。取締役が解任されることがないようにしたいのであれば、発行済株式の議決権の2分の1を上回る議決権に相当する株式を保有するか、定款を変更して「取締役を解任するには、株主総会の特別決議を要する。」のような加重規定を設けることが有効です。
後継者を誰にするかによって、具体的な手当ては異なってきますが、一般的な考え方をお話します。
相続予定者が全員会社経営に関与することは、比較的少ないと思います。そこで、どなたかひとりを後継者とするという場合には、その方に発行済株式の全部を相続させる旨の公正証書遺言を残すことが考えられます。また、種類株式を活用する方法もあります。定款を変更して、議決権制限株式(無議決権株式も可能)を発行したり、発行済の普通株式の一部を議決権制限株式に変更しておきます。後継者の方には普通株式、その他の方には議決権制限株式を相続させることで、後継者以外の家族と会社との関係に距離をおくことも考えられます。さらに、「当会社は、相続、合併その他の一般承継により当会社の譲渡制限の付された株式を取得した者に対し、当社株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」という定款の規定を新設することで、株式の分散を防ぐという手当も有効です。
会社法の下で株式会社(「特例有限会社」といいます。)として存続します。ただし商号は「有限会社」をそのまま使用することとなります。特段の手続は必要ないとされていますが、有限会社の定款に「議決権の数」「利益の配当」「残余財産の分配」などに特別の定めがあるときは、所定期間内に変更しておかなければなりません。
会社法に定められた取締役の任期の制限は、特例有限会社には適用されませんので、これまで同様、任期の制限はありません。
特例有限会社には適用されませんので、これまで同様、決算公告の義務はありません。
定款を変更して、「株式会社」の文字を含む商号に変更します。定款上は商号変更ですが、法務局では特例有限会社の解散の手続と商号変更後の株式会社設立の手続を同時にすることになります。
同一住所で同一の商号の会社がすでに設立されているときは、会社目的の如何に関わらず、その商号を採択することはできません。
会社法では、代表権のある取締役を「代表取締役」とすると規定されていますので、1名でも「代表取締役」とされます。
株式の譲渡制限については、商法のもとでは「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を受けなければならない。」のような定款の規定がよくありました。取締役会を置かないので、「当会社の株式を譲渡するには株主総会の承認を受けなければならない。」と定めてもよいのですが、株主総会の招集手続を考えれば、以下のように定めた方が事務の効率の面からは、よいかと思われます。
「当会社の株式を譲渡するには取締役の承認を受けなければならない。」
募集設立については、金融機関の払込金保管証明書の交付を受ける必要がありますが、発起設立では、設立時代表取締役が発行する払込証明書(通帳の写しを添付)により行うことができます。
~出典「滋賀県行政書士会HP」