日本の中小企業は日本経済の基盤ですから、経営承継は雇用の確保や地域経済活力維持の観点からきわめて重要です。
しかしながら、現状は承継について十分な準備をしている中小企業は少なく、中小企業の持つ貴重な技術力やノウハウの散逸も懸念されています。
そこで円滑な経営承継を支援するために相続時の遺産分割や資金需要、税負担の問題等への総合的な支援策を講じる必要から、平成20年10月1日に施行された中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律が施行されました。
この法律では中小企業の円滑な経営承継を図るうえで、 次の3つを大きな課題として捉え、その課題に対応するべく3つの制度が創出されました。
・民法遺留分の制約を1つ目の課題として捉え、「遺留分に関する民法の特例」制度
・代表者交代による信用不安を2つ目の課題として捉え、「承継に関する金融支援」制度
・事業承継による多額の相続税負担を3つ目の課題として捉え、「課税の特例」制度
平成25年度税制改正において、事業承継税制(非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度)の適用要件等が見直されることになりました。平成27年1月に新しい事業承継税制が施行されます。
各制度の支援対象範囲は資本金、従業員数及び業種に応じて定義された中小企業に該当する必要があります。
具体的には次のとおりです。
・製造業その他 資本金3億円以下 または 従業員数300人以下
・卸売業 資本金1億円以下 または 従業員数100人以下
・小売業 資本金5千万円以下 または 従業員数 50人以下
・サービス業 資本金5千万円以下 または 従業員数100人以下
また、政令により資本金や従業員数が拡大した業種もあります。
なお、中小企業に該当した事業所に対して、各制度は以下の分野につき適用があります。
・遺留分に関する民法の特例は法人の株式が対象
・承継に関する金融支援は個人・法人が対象
・課税の特例は法人が対象
相続・遺言のQ &AのQ34をご覧ください。
この制度では大きく分けて次の2つの制度が導入されています。
制度の適用を受ける条件は大きく次の3点です。
制度の適用を受けるためには大まかに次の手続を順に行う必要があります。
・推定相続人すべての書面による合意が必要です。
・推定相続人全員で遺留分に算入しない合意や遺留分の算定価額を合意時の価額に固定する合意を行い、その内容を書面にします。
・経済産業大臣の確認が必要です。
・合意の内容を経済産業大臣に対して確認の申請を行います。
・経済産業大臣は当該合意が経営の承継の円滑化を図る目的かどうか等の判断を行います。
・家庭裁判所の許可が必要です
・経済産業大臣の確認を受けた後、合意内容の効果を発生させるために、家庭裁判所に対し「遺留分の算定に係る合意の許可」の申立を行います。
なお、上記の手続はそれぞれ経済産業大臣の確認申請は合意後1ヶ月以内に、家庭裁判所の許可申立は経済産業大臣の確認後1ヶ月以内に行う必要があります。
~出典「滋賀県行政書士HP」